太陽光エネルギー

普及へ「ユーザ研究会」

(1996年6月12日、毎日新聞)

NTTマルチメディアビジネス開発部

太陽光発電の研究、普及を促すために、NTTマルチメディアビジネス開発部が企業に呼び掛けて1996年4月から「太陽光発電ユーザ研究会」を発足させた。1996年現在、会員企業は120社で、月1回の割で研究会などが持たれている。

設立の目的
エネルギー消費電力は増大

「太陽光発電ユーザ研究会」の設立の目的は、新たな技術開発によって、情報通信などのエネルギー消費の改善が図られている一方で、便利さなどから社会全体の時間単位のエネルギー消費電力は増大していく傾向にある。

クリーンで再生可能な太陽光発電
「環境」というキーワード

さらに、最近は「環境」というキーワードがますます重要度を増している。企業自らが消費するエネルギーに対して責任を持たなければならない状況にある。こうした時代背景を受けて、クリーンで再生可能な太陽光発電の普及促進を図ることをめざしている。

システムの価格低減が最大の課題

技術的には太陽光発電システムは十分、実用のレベルにある。普及のためにはシステムの価格低減が最大の課題となっている。「太陽光発電ユーザ研究会」はユーザーの立場から需要を示すことで、メーカーの価格変革を促すことにもつながる、とみている。また、ユーザーが集まって新たな利用方法などを話し合い、情報を共有していく。

「運営委員会」「アドバイザリーボード」「ワーキンググループ」

「太陽光発電ユーザ研究会」は民間企業や地方自治体、学識経験者、有識者らが中心に「運営委員会」「アドバイザリーボード」「ワーキンググループ」をつくっている。とくに太陽光発電にかかわっている現場経験者の生の声を期待している。

太陽光発電システムを安く
年間需要量のシミュレーション

活動は価格低減に必要な年間需要量のシミュレーションやシステム構成部材の見直しなど、太陽光発電システムを安く入手できる条件作りをメーカーに提言していく。

調査・研究のテーマ

調査・研究のテーマは「太陽光発電の基礎・導入の意義」「太陽光発電システムの利用状況」「太陽光発電マーケット状況」「システム導入の手順」「設置への支援制度」など、月1回の割で7回行う。

クリーンエネルギーシンポジウム

また、「クリーンエネルギーの経済学」や「災害対策とクリーンエネルギー」「未来社会のエネルギービジョン」などをテーマにしたセミナーも予定。クリーンエネルギーシンポジウムも開かれる。活動期間は1年で、研究成果はインターネットホームページ「太陽光発電ユーザ研究会ホームページ」で発表、ネットワーク上で公開討論などを実施する。

太陽光発電に関心があるメーカーを対象

「太陽光発電ユーザ研究会」は太陽光発電に関心があり、将来導入を希望していたり、すでに導入している企業、団体、太陽電池を使った商品開発を計画しているメーカーを対象にしている。参加は無料。問い合わせはNTTマルチメディアビジネス開発部内「太陽光発電ユーザ研究会事務局」。

ソーラーハウス 太陽光発電 公庫融資対象

ソーラー住宅とは?

(1998年5月13日、産経新聞)

ソーラー住宅とは、「太陽集熱器と屋根とが一体となったもので給湯、冷暖房を行うもの」(ソーラーシステム振興協会)

ソーラーシステム振興協会
ソーラーハウスの誤解

だが、一般にはまだ、太陽熱温水器を設置した家だけがソーラーハウスという誤解があると、同協会の伊東昇業務・広報部長は指摘する。

太陽熱温水器の設置台数
住宅用ソーラーシステム

「太陽熱温水器の設置台数のピークは、第二次オイルショック直後の1980年(昭和55年)で、約80万台を記録して以後は急減。原油輸入価格が低下し、省エネ意識が消えたことの証明です。一方、住宅用ソーラーシステムはこの10年間、2万台前後で横ばい。何か飛躍のきっかけを求めています」

住宅・建築省エネルギー機構

「住宅・建築省エネルギー機構」は、ソーラー住宅を次の4タイプに分類している。

  • 冬の斜めから差し込む日差しを南の大きな窓から取り込み、床や壁の蓄熱体に蓄え、床暖房などに使う「直接集熱システム」。
  • 屋根に集まる太陽熱を利用する分離集熱システム(屋根集熱方式)。
  • 冬は屋根で熱くなった空気を、夏は床下から冷たい空気を取り入れ、家の中を循環させる分離集熱システム(空気循環方式)。
  • 屋根の太陽電池によって光を電気に変換させる太陽光発電システム。
住宅金融公庫のソーラー住宅割増融資
ソーラーシステム振興協会の認定

「これら4つのシステムで当機構の認定を受けたものは、住宅金融公庫のソーラー住宅割増融資(最大限250万円)の対象となる。これで普及にはずみがつくでしょう。特に最近、技術の進歩がめざましいのが太陽光発電です」(佐々木勲一広報・業務部長)

各社の取り組み
キヤノン
住宅用太陽光発電システム

1996年(平成8年)から住宅用太陽光発電システムの販売を開始。これはアモルファスシリコン太陽電池を高耐久性屋根用金属板に接着して成型加工を施した屋根材一体型太陽電池。同じ形の通常屋根材と混在させた施工ができるから、住宅屋根に調和する。

製造コストの大幅な低減

米国企業と合弁で設立したグループ会社が持っていた太陽電池の量産化に役立つ成膜技術をもとに、さらに高速成膜法の生産技術の開発に成功、製造コストの大幅な低減を実現した。

松下電器産業
パナソニック住宅用太陽光発電システム

松下電池工業と共同でパナソニック住宅用太陽光発電システムを発売。「変換効率に優れた高出力・高効率の太陽電池モジュールを使用し、小さな設置面積で高い発電量が可能」とメリットを強調。京セラ、シャープも太陽光発電システムに独自の技術を応用している。

シロキ工業(自動車部品メーカー)
家庭用ハイブリッドソーラーシステム『ヘリオス』

1998年4月、家庭用ハイブリッドソーラーシステム『ヘリオス』を発売。シロキ工業は多角化戦略の一環として7年前から太陽エネルギー利用技術と取り組んできた。「これまで別物とされていた太陽光発電と太陽熱温水システムを他社に先駆け複合化するのが夢だった。屋根組み込み一体型システムとして新築にも既存住宅にも取り入れを図りました」(シロキ販売・山口泰之副社長)

一つのシステムで同時に発電と給湯

『ヘリオス』は一つのシステムで同時に発電と給湯が可能。これによって発電と給油のシステムを単体で設置し使用していた従来に比べ、大幅な低コスト化が図れるほか、家屋の美観を損なわず設置ができる。

ミサワホーム
オール電化住宅『太陽の家』

1997年(平成9年)に、太陽光発電システムを標準装備した住宅を家庭の消費エネルギーをすべて電気でまかなうオール電化住宅『太陽の家』と銘打って発売した。木質系とセラミック系の2種がある。

ゼロ・エネルギー住宅

さらに年間の創エネルギーと消費エネルギーをイコールとし、ランニングコストをマイナスにしようとする「ゼロ・エネルギー住宅」の開発をめざす。太陽や雨水、季節風などを積極的に活用したゼロ・エネルギー住宅はシミュレーション実験し、1998年7月ごろ新商品として発表の予定だ。

エアサイクル産業
空気循環方式「PAC(パッシブエアサイクル)住宅」

前出の4タイプのうち空気循環方式に当たる「PAC(パッシブエアサイクル)住宅」を提案。「機械設備に頼らず、建築的な手法で太陽熱や風などの自然エネルギーを活用、住宅を快適に、そして耐久性も向上させようという考え方が基本です」(市川小奈枝取締役)

木造家屋に適用

木造家屋に適用、屋根・壁全面に集熱のための通気層を設けるほか、床下、内壁、間仕切り壁その他の空間をつなぎ、空気の通り道とする。エアサイクル産業は施工会社をサポートすることでこの工法の普及を図る。

わが家で太陽光発電

エコロジー中心の文明へ

(1996年5月16日、毎日新聞)

太陽光発電
購入者の負担

浜川 購入者の負担が実際どれだけかかるのか、よく分からないが。

約200万円を負担

手塚 1994年度は3キロワットのシステムで太陽電池が300万円、インバーターが160万円、そのほか工事費など全体で600万円かかった。それに半額の補助があるので1994年度は300万円ぐらいで付けられた。1995年は30%ほど安くなり436万円で、自己負担は約220万円。1996年は350万円ぐらいになるのではないか。だから3キロワットで150万円の補助だと、約200万円が、今度のモニターに当選された人の負担ではないか。
今の価格で数量が増え2000年で6万世帯ぐらいになれば、補助制度がなくなるのではないかという気もしている。

戸数で10万戸ぐらいまでは支援策

河野 いずれにしろ、2000年に40万キロワット、戸数では10万戸ぐらいいくまでは支援策を取る必要がある。値段が安くなり、あとは普通の商売として家電並みに売れていけばいい。

太陽光発電の節約効果
ピークカット効果

手塚 では太陽光発電を付けた場合の節約効果はどうか。
私の家は3.6キロワットの太陽光発電を付けているが、1995年5月は370キロワット発電した。一般家庭の月平均電気使用量は280キロワットぐらい。雨の日でも1日2キロワット発電している。停電になってもテレビや冷蔵庫などは動く。3.6キロワットぐらい付ければ自分のところで使う分ぐらいはまかなえる。全世帯に付くと、約720億キロワット時で電力需要の9~10%になり、ピークカット効果や環境改善につながる。

太陽光発電の安全性

見城 パネルを乗せる安全性は大丈夫でしょうか。

瓦と比べて安全
地震の際の建物への荷重

石川 私の家では6.8キロワットの発電を屋根全面に付けている。普通は20年に一度ぐらい250万円ほどかけて屋根のふきかえをする。太陽光発電は100年は屋根材としてもつので、うちの場合で言えば1000万円ほどの費用がかからなくてすむ。安全性は、瓦に比べ工業化されており、地震、台風などの対応力は何倍もある。地震の際の建物への荷重は2分の1から3分の1ぐらいだ。

太陽光発電の景観

森山 景観との関係は。

建物とのマッチングが悪い

石川 屋根建材としてみると、建物とのマッチングが悪い場合が多いと思う。ただ、5年もすれば各地の建材メーカーが地元にあった発電の屋根建材をつくっていくと思う。

エネルギー集約型の技術革新を

見城 今後、例えば衛星放送のパラボラアンテナを窓際につければいいぐらいのエネルギー集約型の技術革新を太陽光発電に期待したい。想像を絶する新しい道も模索してほしい。屋根全面に発電機を置くのでなく、個々に発電するものがあり、大きなところはパラボラアンテナぐらいで、家の基幹となる電気が動くような仕組みなどあれば。

アモルファス太陽電池

浜川 素人の発想はこわい(笑)。アモルファス太陽電池などは1ミクロン以下の膜だからペンキの代わりに使って、それが全部太陽電池になる、なんてことは夢として努力してみる。

ゼロエネルギー住宅

石川 北海道旭川市に「ゼロエネルギー住宅」というのを建てている。太陽電池でたまった熱を暖房に使ったり、お湯をわかすという工夫をする。夏の夜になると放射冷却が起こり、冷たい空気をためることができる。それを使って冷房に利用する。あるいは太陽電池を天窓につけておくと、発電するので電動の天窓もできる。多機能にしたものの応用版で、見城さんがおっしゃったこともできるのではないかと思う。

情報サービスの開示

森山 先程、見城さんから指摘された情報サービスの開示については。

太陽光発電懇話会

手塚 太陽光の技術は進んでおり、情報開示のシステムを「太陽光発電懇話会」を中心につくっていこうとしている。1996年から、(京セラは)「ソーラー友の会」をつくり、無料で資料を送っている。また、具体的に地域や家の立地条件、日照データなどをコンピューターにインプットして、「お宅ではこれだけ発電できる」などというシミュレーションも可能で、販売店にそのシステムをネットワーク化しつつある。情報サービスには業界あげて努力していきたい。

太陽光発電を設置した後の相談窓口

石川 懇話会の住宅ワーキングのメンバーとしては、ユーザー保護の立場から太陽光発電を設置した後の相談窓口を夏までには懇話会につくりたい。

クリーンなエネルギー

見城 消費者としてはクリーンなエネルギーを使っているという一種のプライドが大切だ。不都合があったとしてもそれを生活文化として取り入れるのか、私たちに問われている。

エコロジー重点文明
太陽光発電のスケールメリット

浜川 石油が大量生産・低コスト化で石炭にとって変わったエネルギー革命に負けないぐらいのスケールメリットが、太陽光発電にはある。エコノミー中心文明からエコロジー重点文明への技術革新は意外に早く来るのではないか。